栃木県 足利商工会議所

今回は足利商工会議所での5S活動を紹介します。

足利市は、栃木県の南西に位置する市であり、人口約15万人弱の町です。世帯数は約6万世帯、そして平成26年の統計調査のデータにはなりますが、工業関係の事業所数が585、製造品出荷高が3500億円、商業関係の事業所数は1560事業所。商品販売額が2500億円という規模も町になります。

足利商工会議所は、昭和15年に設立。職員数は23名です。足利商工会議所の建屋は、昭和33年にできた建物であり、もともとは足利銀行3代目本店の建物であったことから各階に金庫室があります。現在は書類の倉庫や展示室として活用しており、その歴史を感じられる趣から、地元の小学生の社会科見学等でも活用されています。(下図参照)

そもそも、なぜこの足利商工会議所が5S活動を行っているかと言うと、今から9年前に「足利5S学校」が設立されたからです。

「足利5S学校」とは何かというと、行政機関・学校・商店・飲食店・社会福祉法人など業種に関わらず、広く5Sを学べる場を提供するコミュニティです。5Sに悩む企業や今から5Sを始める企業が深く学べるように「インストラクター養成講座」「見学会」「サミット」など様々なサービスを提供している団体であり、その事務局が、足利商工会議所となるわけです。

会議所の重点目標に「5S活動」を掲げ、平成23年に5Sキックオフ宣言をし、活動をスタートしました。

しかし、当時のこの宣言も一時的なものに終わってしまったそうです。なぜかと言うと、職員の意識が低く、5Sを行うことの目的が曖昧で、職員内で意見が一致しなかったからだそうです。

5Sを行うのは、あくまで企業であって、事務局は関係ないといったような他人事になっていたところもあったと思われます。

しかし、5S学校の組織も新体制となって、徐々に5S活動が市内外に広まってきた今日になって、周りから5S学校の事務局自体が5Sを始めなくてはどうする?という声が多くなってきたことから、再度5Sを行うきっかけが出来ました。


それでは、どんな取り組みをしたのか紹介します。まずは、5S担当者を決め、その担当者が自分一人でできる範囲でよいので、身の回りから5Sを初めてもらいました。

自分の机の上に敷いてあったビニールマットを処分したり、引き出しの中の整理として文房具の姿置きをしました。

次に手掛けたのは、書類です。

とにかく書類が多いです。日々書類が関係機関等から送られてくるので、保管する場所がない状況でした。また、今まで5Sを行っていない訳ですから、書類を捨てる基準などもなく、ルールも属人的なものになっていました。職員は捨ててクレームをつけられると嫌なので、誰も書類廃棄をためらい問題をスルーしていた状況でした。そのような環境の職場に5Sのメスを入れるわけです。

倉庫内の書類を要るものと要らないものに仕分けをして、要らないものを処分しました。4tトラックが3台埋まるほどの量です。今でも必要のない書類は処分をし続けています。最初に行った、この徹底的な整理が周りに影響を与え始めます。最初は5Sの担当者が1人でやっていただけで、周りはそれを見るだけでしたが、「私も手伝います。」と協力者が1人増え、もう1人増えというようにどんどん増えていきました。(下図参照)

ある程度処分が進んだことで今度は、各課1名5Sの担当者を選任し、職員で倉庫内の1Sを始めました。これも相当量捨てました。倉庫内空いたスペースの棚に各課ごとに書類をまとめました。


また、事務所内があまりにも見通しが悪く職員がいるかどうかもわからない状況でした。その理由は、プリンターが目線より高い位置にあったこと。プリンターを載せていた机を処分し、パイプツールを活用して高さを低くし見通しを良くしました。(下図参照)


下の写真は、各階にあった書類やダンボール等を一旦外にある倉庫内に保管しておき、業者へ回収してもらうために駐車場に紙類を搬出している様子です。金属類(いわゆる燃えないごみ)は160kg、紙類で510kg。このように大量のゴミが会議所内から出てきました。


下の写真は、一番初めに取り組んだ倉庫内の1Sです。


この写真は、3階にある金庫室の倉庫内です。本当に足の踏み場もなくひどい状況でした。そこを5S担当者によって床が見えるようになりました。


下の写真は、地下にある一つの部屋を紹介します。この部屋は、平成17年に移転してきた時に保管していた書類がありました。この部屋もさきほどの3階倉庫と同様に足の踏み場もないくらい物や備品関係が点在していました。そして改善後を見てもらうとわかりますが、このようにきれいさっぱりと不要な書類を処分して、毎月発行している会報誌を保管場所にしました。


下の写真は、キックオフ時の5S担当者の机の引き出しの中です。当初は、ボールペンやシャープペンなど文具類が乱雑に入っているような状態でした。当時はこの乱雑さでも仕事は出来ているし、問題ないと担当者は思っており、たいした問題意識はなかったのですが、文房具の姿置きをしている5Sの整った会社を見学してもらう事で、まだまだ改善できる点はあるという事を認識してもらいました。


以下、5S担当者のコメントです。

「今回あらためて5Sをはじめて実感したことは、書類を探す時間が短縮できたことは非常に大きいですね。また、書類を処分したことで書類を綴っていたキングフィルが630冊もあいたことやダブルクリップも800個と数多くでてきたため今後しばらくは購入せずともいられるという経費削減にまでつながりました。こんなに量があるんだと改めて驚かされました。最後は、やはり人の意識の変化です。今回この5S活動を私なりに進めてきましたが、やはり通常の勤務時間帯ではできず、休日等にもでてきて書類の処分など行ってきました。その姿を見ていた同僚がいっしょになって手伝ってくれたのは本当に嬉しかったです。これには本当に感謝しています。まだまだ職員全員まで意識改善にはなっていませんが、少しづつ前に一歩でも進むよう自分事としてとらえ行動していくことができてきたという点が最大の効果でしょうね。」

5S活動には終わりがありません。引き続き継続していくことが最大の課題であり、それが最も難しい事です。

そのためには、定期的な「5S」巡回、お客様を招き入れる事が、続けられるコツになります。お客様に見て頂くことで改善点が発見できて、より仕事がしやすい環境が生まれるものと思います。

今では、個人個人では毎週水曜日に身の回り、特に自分の机周りは意識をもって書類等の処分に取り組んでくれています。