栃木県 T社

栃木県にあるT社での5S改善を紹介いたします。

T社は自動車向け板金プレス金型・治具の設計、製造を行う会社です。主な設備としては、5軸NC加工機や、最大1,200tのトライアルプレスなどがあります。

5S関しては、すでに着手していたのですが、本やセミナーで学んだことを中心に社内独自で行っていました。当初は上手く機能していたのですが、年々モノが増えて棚から溢れ、必要な物が見つからないことが多く、作業スペース・通と・部品や材料置き場が混在するようになってきた事から、「足利5S学校」にてもう一度5Sをスタートすべく再キックオフをいたしました。

下の写真が再キックオフ前の現場の状況です。

随分荒れていますね…ここから改めて5Sを始めるわけですが、以前の5S活動はコンサルタントのトップダウン方式で対象は現場のみ、期限を決めてそこまでに改善しなければならないといった進め方でしたが、この度取り組む5Sは真逆の進め方。現場主体のボトムアップ方式で事務所も含めた全社が対象になっています。また、「〇月〇日までに改善して下さい。」と言ったような期限は切らない方式です。我々の5S方針をしっかり理解して頂き、進めていく事にします。


まずは、改善の基本である通路を確保する事から始めます。この「通路を確保する事=基準線をつくる事」で、治具や工具・材料と言ったあらゆるものを自然と直角平行に置くようになります。また、基準線がある事で、人が線を跨ぐ際に、フォークリフトが来ていないか意識するようになる事から安全性が向上いたします。

通路へのはみ出しや、通路上に落下物があると、すぐに異常と判断される事から現場の従業員の意識向上にもつながる改善です。

この通路は消耗品で、フォークやトラックが頻繁に行き来するような現場では、1年に1回程度で塗りなおし(メンテナンス)が発生しますが、自分たちで出来る事は自分たちでやろうという事で、床面は社員さんで塗装メンテナンスしております。


続いて切削ツールなども写真の通り見えやすいように改善しました。このように見えやすくする事で在庫にも意識が向くようになり、あまりに量が多いと「買いすぎじゃないか?」と、材料の量に違和感を覚えるようになってきたのはこの頃からでしょうか。


ボルト・ナット類・加工具品に関しても、種類をわけ取り出しやすいように収納する事にしました。


作業改善も行いました。これは、クッションピンという材料ですが、以前はストア管理されていたところから作業者が各成型機まで手で運搬していました。このクッションピンが意外と重くて、嫌な重筋作業の一つでした。

これを改善すべく、専用台車を作成し、そのまま機械近くまで運ぶことができ、作業者の負担軽減につながりました。


続いて設計室の改善です。

下の写真は設計室の風景です。普通設計室と言うと、専用のデスクに担当者がPCとにらめっこして、長時間デスクに座っているという光景を想像しますが、T社の設計部門は立って仕事をしています。これは、社長(当時:専務)が他社の5S見学をした際に、立って仕事をしている設計室があったようで、それに感銘を受け、自社でも真似して導入した事が始まりです。

設計室というのは…どこの会社もそうかと思いますが、集中力が必要な仕事のため、専用の部屋が用意され、他部署と隔てた場所に位置される事が多いと感じます。我々はこれを「離れ小島」と呼んでいるのですが、この離れ小島が5Sの観点からは良くない。監視の目がない事から作業自体がその人のペースになってしまい、他部署との連携が取りづらくなる。また、緊張感がなくなるので居眠りするなどモラール欠如にもつながります。

実際、当時のT社でも上記のコミュニケーション不足やモラール欠如が問題になっていたみたいですが、具体的にどのように改善して良いかわからず、頭を悩ませていたそうですが、他社の例を見たことで、「ウチでも出来る。」と確信して導入したそうです。

結果は良好。居眠りはなくなるし、仕事の機動力が上がりました。また、立ち作業は椅子が無い分スペースが広がるので、今では1台のモニターを3,4名の設計者共有して見れるようになり、設計者同士でのコミュニケーションも良くなったそうです。

以前では考えられない状況ですね。

他社を見学して、良いところは真似をする。5Sで行き詰った時は、周りの会社を見てみましょう。改善にヒントが山ほどあります。

また、立ち作業に変える事で、棚がデスクの下に収納でき、資料を手元化する事ができるようになりました。

事務所に関しても、デスクの上には物を出しっぱなしにしないなどルール化したり、書類なども取り出しやすいように表示したりしてくれています。引き出し内も余計な備品が溜まらないように、整頓マットで改善しています。

このように一連の活動を社員さんに振り返ってもらいました。 実感した効果として、

.モノ探しの時間が短縮された

2.消耗品のムダ使いが減少した

.汚れている所が発見しやすくなった

4.工場内の安全性が向上した

5.仕事のモチベーション、コミュニケーションが良くなった

6.社員の創造力、工夫力が発揮された

など、無限の効果につながっています。

5Sは裾野の広い活動です。5Sを深く追求すれば、安全性や品質など様々な分野に効果が広がります。社員同士のコミュニケーションにも有効です。