相洲楼

代表:船戸川嘉子
住所:足利市通5‐3028
従業員:6名(パート10名)
URL : http://www.soshurou.com/

相洲楼は創業が明治初期で、大変歴史のある老舗料亭です。 

 5Sを始めるきっかけになったのは、足利5S学校の発起人でもある役員の方々からのアドバイスでした。先代の大女将から継承されたお店は、時代の流れによる変革が求められている状況にあり、女将と若女将は、5Sという言葉の意味もよく知らずに半信半疑でのスタートとなりました。

写真は店内のロビーの写真です。

このロビーは、本来であればお客様の打ち合わせの場であったり、一息つく憩いの場であったりするところですが、お店の商品や様々なモノが置かれており、ロビーとして機能していませんでした。

 そして、いつの頃か、その場所をお客様に見せないように客室に案内するのが当たり前になっていました。
そこでまず、このロビーから改善を始めました。 まず、第一ステップとして、「明らかに不要と思われるモノ」を処分しました。迷うものは一旦そのままにしておいて、次のモノへと移り、まずは判断しやすく考えなくても捨てられるモノを捨てる事で捨てる勢いをつけました。


 第二ステップは「もしかしたら使うモノ」に対し、判断基準を決め捨てていきました。判断基準は「今の相洲楼にとって、今日のため、明日のためにならないモノ」とし、もったいない気持ちや残しておきたい気持ちはありますが、女将には決断して頂き、思い切って処分しました。女将と若女将の2人には、今まで長い間とりあえずそのままにして、後で考えようと山積みにしていたモノと向き合っていただき、とにかく捨てる作業を実践していただきました。整理を徹底的に進めた結果、7割近くのモノがなくなりました。生み出されたスペースでディスプレイする事で、ロビーが整然と変化し、お食事を終えたお客様がくつろげる空間にもなりました。

 また、以前から置いていたお酒の数々は、常連のお客様の要望もあり、取り寄せたモノがほとんどでしたが、お客様から評判のよかったお酒を厳選し、選び抜いた数本を置くようにした事で、お客様の目に留まり注文が入るようになりました。また、ロビーが変化した事で、お客様とのコミュニケーションもよくなり、「もっとこうした方が良い」と貴重な意見をいただく事もできて、食後のコーヒーがメニュー化されたり、メディア取材が入ってきたりと市内でも話題となり新規顧客獲得のきっかけにもなりました。

 加えて、ロビーをきれいにしたことで、思わぬところに波及効果が生まれました。 それは、食事をする客室で、お客様がお食事をとった後の食器や部屋の片づけです。
 慣例で、料亭で出された最後の食器は、お客様が退室しないと片付けられない事となっており、(退室する前に片付けると、早く帰ってくれと取られてしまうため)その間、従業員が待機(手待ち)していました。 しかし、ロビーがきれいになったことで、お客様が速やかにロビーに移り、後片付けが早く取り掛かれるようになりました。この手待ちがなくなったことで、仕事の効率が上がり、従業員は早く帰宅できると喜んでいます。  

 この改善の変化を経て、従業員がお客様を意識するようになり、今度は何の改善に取り組もうか考える姿勢が出てきました。

 最初に従業員が着目したのは、客室から物置きとなってしまった部屋でした。 客室は、大広間から個室まで大小様々ありますが、お客様の人数によりテーブルや椅子の台数を変えなければなりません。また、「座敷が良い」「テーブル・椅子が良い」など、お客様の要望により、セッティングをその都度変更しなければならなかったことから、客室2部屋をつぶして、物置にしていました。

そこで、まず従業員は物置となっていた客室を元に戻そうという目的で、店内全体を整理することで場所を捻出し、見事に客室としてよみがえりました。中には思い出がたくさんつまった物もありましたが、女将が自ら決断をして処分しました。

 私たちは、5Sでまず、モノを対象に整理からスタートしますが、モノが動く事によって、同時にそれを扱う人も動くことになります。動くことでコトも変わり、人が行動することで人の心も変化します。

  紹介した相洲楼の5S改善は、当たり前のことを当たり前にやっていこうという考えで、できることを確実にというスタイルに終始しています。半信半疑で始めた5S改善ですが、現在は従業員一丸となって活動しており、一人一人が日々考えながら働く集団へと変化しました。

 5Sによる改善が、変化し続ける社会に対応していける企業づくりにつながっていきます。